王様の価値観

 ある国に、それはそれは気難しい王様がおりました。王様はある日、朝から色々といやなことが重なったので、昼ごろに叫びました。
「価値観のあわない召使いは罰ゲームだ!」
 さあ大変です。王様のお世話をする三十人はくだらないといわれる召使い達はあせりましたが、有無を言わさず王様の前に並ばされました。
 まず、一番背の低いものが三歩出るように指示されました。
「問題です」王様の脇に立っている大臣が言いました。「賞味期限が切れた卵でも、ゆで卵にしてあれば平気だ」
 一番背の低い召使いは少し考えて、「バツ」と言いました。
「マルに決まってんだろ!」王様が立ち上がって叫びました。「漢方薬二週間!」
「はい、では罰として、今お前が健康な部位に効く漢方薬を二週間飲み続けてもらいます。苦いです。凄く苦いです」大臣が表情を一つも変えずに言いました。
「積極的にゆで卵にしていけよ!」王様はどすんと大きな音をたてて座りました。
 心の中でバツと答えていた召使い達は、気を引き締めました。すでに健康だとしても漢方薬を飲むのはいいことだと一瞬思いましたが、よく考えたら苦いのはいやだし面倒くさいし、それに調子の悪いところに効くものをのませてもらえない分やるせなさも大きいのです。
「次!」王様はトップバッターと価値観が合わなかったということで、不機嫌になっていました。
 二番目に背の低い召使いが前に出ました。
「問題です」大臣が言います。「JALの正式名称を言ってください」
 召使い達はざわめきました。問題の形式が一つではないということに驚いたのです。それに、こんな知識を問う問題が出ることは予想していませんでした。
「ジャパン……」
 二番目に背の低い召使いはそこまで言っておろおろしていましたが、大臣がしきりに腕時計を見るので、たまりかねて。頭を下げました。
「申し訳ありません。わかりません」
「よし、オーケー!」間髪いれず、王様が叫びました。
 召使い達は顔を見合わせて、なんともいえない表情をしました。そういう形が正解なのだということと、王様はJALの正式名称をジャパンまでしか知らないんだということがわかったからです。召使い達の中に、これならなんとかいけそうだ、というよくわからない自信が芽生えました。
 でも、召使い達は気付いていませんでした。王様はその時、かなりお腹が減ってきたので、少し待って召使いのうちの誰かが「昼食にしましょう」的なことを言わない場合、もう全員まとめて熱湯風呂に押し込んでやろうという、お笑いウルトラクイズのような恐ろしいことを考えていたのです。