スモールライトドリーム

 小さくなって好物を腹いっぱい食べたい。あなたの人生においてドラえもんの存在が大きければ大きいほど、僕の夢に強く賛同してくれるはずだ。そういうわけで僕は同志を集めた。市役所から一時間単位で借りることができる会議室は熱気むんむん、僕はスモールライトを取り出して話を始めた。
僕・マコト「ではここで、みなさんの好物を訊いていこうと思います」
私立中清掃員・林田「はい、私はチキンマックナゲットです」
人面犬・ドギー岡本「それは必ずマックでなくちゃいけないのか、それとも、スーパーで売ってる冷凍のナゲットでもいいのか」
私立中清掃員・林田「マックのがいいです。冷凍のでもいいけど」
妖怪Jリーガー・ゲム五郎「どっちだよ!」
僕・マコト「とりあえずナゲットということでここは手を打ちましょう。ゲム五郎さんはどうですか」
妖怪Jリーガー・ゲム五郎「チキンマックナゲットの方がいい」
僕・マコト「そういうことじゃなくて。好物です」
妖怪Jリーガー・ゲム五郎「チキチキボーン」
カリスマ保母・東さん「日本ハムから出てるあれね」
僕・マコト「東さんはカリスマ保母としてどうですか」
カリスマ保母・東さん「カリスマ保母としての好物とかはよくわからないけど、チキチキボーンはかなりいいと思う。そういえばかなり好きだわ。子供達も大好き」
人面犬・ドギー岡本「オレも乗ろう。あの肉がついてる骨だろ。ただ、レモン風味は無しだ」
私立中清掃員・林田「ちょっと待ってください。これじゃ、三対一で、ナゲットが不利じゃないですか」
僕・マコト「そういうことになりますね。でも安心してください。ぼくはナゲット派です」
妖怪Jリーガー・ゲム五郎「なんだって!」
私立中清掃員・林田「マコトさん……!」
カリスマ保母・東さん「これで三対二ってわけね」
妖怪Jリーガー・ゲム五郎「案じることは無い。数の上でも不利なのに、ケチャップつけないと味が薄い。ナゲット派はもう終わったようなもん、加えてこっちは凄くジューシーだ」
僕・マコト「チキチキボーンのジューシーさは諸刃の剣、逆に一つのネックです。我々が小さくなれば、そのジューシーさが仇となり、油っぽさが倍々ゲームで、倍率ドンで襲ってくる。僕なんかは手が使えるからいいものの、体が犬の人が食べるとなると間違いなく口の周りといわず顔全体が」
人面犬・ドギー岡本「俺はナゲットに移る」
僕・マコト「決まりですね」
 僕は有無を言わさず立ち上がり、あらかじめ買っておいた裸のチキンマックナゲットを五つポケットから取り出してテーブルの上に叩きつけると、まずは人面犬にスモールライトを向けた。僕は買出しとか、一旦外に出てなんやかんやするそういう時間が一番嫌いなんだ。文化祭の準備の日にマクドナルドでお昼買ってくるとか、ずっとずっと、なんとなくむかついていたんだ。