勇者の吸い込み系ウエポン
僕の武器はこの強力ハンディークリーナーだ、ということを確認してから、気分的に伝説の勇者コウジは村を飛び出した。なんでもかんでも吸い込んでやるさ!
野うさぎが現れたので、コウジはそれまでは机の上のポテトチップスの食べかすをキレイにするためだけに使っていたハンディークリーナーをオンして、ブヒョォォオオォォー、という音をさせながら飛び込んだ。
「痛い痛いたいたいたい」野うさぎはだるそうな顔で言った。
ブヒョォォオオォォー。
コウジは一度、スイッチをオフにした。ゥゥウン。
「参ったか!」コウジは叫ぶ。
そしてまた入れるブヒョォォオオォォー。
「参ったよ、これは参った。だってお前、俺は野うさぎだぜ。ただのうさぎじゃねえ、野、うさぎだ。だからこんなメカニックなもん見たこともねえから。俺はつまり、元寇で爆発する玉にびっくりした武士さながらだよ。耳二本とも持ってかれてるけどどうなってんだよこれ?」
ブヒョォォオオォォー、ズババババ、ズボズボズボ。吸気口のところで長い耳が震えて変な音が出る。
コウジはニヤリと笑って、また電源を切った。ゥゥウン。
「経験値いくらくれる? 経験値いくらくれる?」
「いくら欲しいんだよ」
「それは僕の方からは言えない」
「ま、だいたい6ぐらいだろ」
ブヒョォォオオォォー、ズボボバババ、ズボズボズボズボ。
「5000やるよ! 5000! これでお前は」
「レベル21だ!」
コウジは電源を切って、次の小動物を目的に走り出した。