さようならライブドアブログ

「裏切ったな!」ライブドアブログは言った。
 僕はユニークな会社イメージを盾にしてライブドアブログを上から目線で見た。
「裏切ったんじゃないよ」僕は言った。「ビジネスチャンスを見逃さないのが僕のいいところだ」
「あんなにいっぱい書いたじゃないか。創作を213個も書いたじゃないか。今まで二人三脚で頑張ってきたんだろう」
「違う。頑張ったのは僕だ。でも君はあまりおいしい思いをさせてくれなかった」
 本当にそうだった。プロフィールから飛ぶことが出来る僕のライブドアブログ『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』の月別カテゴリーの一番下には2004年10月と書いてある。でも。
「二年半頑張っても一日に50人ぐらいしかこない」
「それは君がネットでも内弁慶で宣伝をしたり他のサイトと付き合ったりしないからだ」
 ライブドアブログのその一言を、僕は聞き逃さなかった。僕は聴力検査をかなり得意としていて、最近あまりする機会ないけど、一度なんかあまりに早く手を上げておばさんに思わず「早い」と言わせたことがあるのだ。
「とうとうシッポを出したな!」僕は言った。「君は僕を人見知りの内弁慶だと心の中で馬鹿にしていたんだ!」
「おいよせよ!」ライブドアブログは僕の口をふさいだ。「企業イメージにかかわるだろ!」
 僕はライブドアブログの手を振り払った。
「はてなさんは、はてなさんは何か色々な機能で、色々やってくれるんだ!」
 僕はまだはてなさんの凄さを知らなかった。でも、きっと色々やってくれるのだと信じている。
「君は、ネット上で何か読む時にダブルクリックで反転させて読む癖があって、なんかキーワードのリンクに飛んでしまってはてなはむかつくとこぼしたことがあったじゃないか」
「はてなさんは変な箸の持ち方を矯正する感じで僕の変な読み方を矯正してくれて、将来的に、変な読み方をする人をテレビで見た時に『この人変な読み方してるわねぇ』と横で母親が言い出しても、僕は屈託なく笑うことが出来るようになるんだ!」
 ライブドアブログは絶句した。二十歳を過ぎても衰えることを知らない僕の向上心に。
「君にも言ったことがあるだろう。僕が何かをあきらめたのは、高校一年の時に左利きになろうとした時だけだって」僕は続けた。「恥ずかしくなってすぐ消したけど」
 俯いてしまったライブドアブログに、僕は何も言えなかった。僕が書いてライブドアブログが載せる。不満はあっても、そんな素晴らしい連係プレーの二年半を共有していたことに間違いはない。けど、もう終わったことなんだ。
「君が右利きだとしても、天才は左利きという固定観念に君が支配されていても、多少はあると思うよ、君には才能が」ライブドアブログは顔を上げて言った。
ライブドアブログ……」
 ライブドアブログは平たい石を見つけると、川に向かってサイドスローで投げた。二回ほど水面を跳ねた。
「というのは、創作の記事が200を超えた時、思ったんだ、普通こんなに書かないだろうって。みんなこんなに書いてねえよって。みんながしていないことをしてるなら、才能といってもいいんじゃないかな」ライブドアブログは僕に向かって優しく微笑んでいた。「あれは残してくれるんだろ」
「あれも移動させる」僕は言い放った。
「そんな!」
「しばらくは君のものだ。移動させるめっちゃ簡単でお手軽なやり方が見つかるまで、君のものだ」
 僕は立ち上がって、平たい石を探した。そして、最高の石、を見つけた。これやっべえかなりいくぜ、を見つけた。もし三つ見つけたとしたら絶対最後に投げるわ、を見つけたのだ。
 僕は投げた。アンダースローで投げた。同時に僕はその行く末を見守り、カウント実況中継を始める。
「いち……にぃ…さん、し、ごぉろくしちはちきゅじゅじゅいち」僕は最後の波紋が消えても川面を見ていた。「最後の入れるか入れないか微妙だけど、入れなくても11回」
 ライブドアブログは目を見開き、両手を顔の前で広げるわかりやすい驚きのポーズだ。
「これでわかっただろう、僕は次のステップへ進まなくちゃいけないんだ」
 ライブドアブログは観念したように座り込んだ。
「最後に教えてくれよ。いつ決心したんだ」
「実刑判決が出た時だ」
 でも、それは君のせいじゃない。僕はライブドアブログにそう言いたかったけど言葉にならなかった。