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死、もしくは横入りの世界

武男は郊外のアウトレットに向かって、高速道路を北へ快調に飛ばしていた。昨年、武男が所有するミニバンは、優秀なミニバンに贈られる賞のひとつをみごと獲得している。その車内、助手席の妻はスマートフォンで目当てのワンピースに関する情報を根気よく検…

んこみての 3

翌日は学校訪問でした。白樺にある、小さい頃に一度泊まったことのある、お父さんの会社の、セミナアハウスの生き写しだと思いました。 グルウプごとに案内され始めて、いくらもたたないすぐのことです。アンドリュウが、無理やり、わたしの手をぐいと引きま…

んこみての 2

飛行機のなかで、ごはんを食べるほかは、わたしはずっと、寝ていたようです。温度が、ちょうどよかったのです。キングスフォオド・スミス空港にあと1時間という頃、入国カアドを書くために、おとなりの安田さんに起こされました。 たいへんなスケジュールだ…

ネギトロと井戸の話

おやしきには、ふかい井戸がありました。でも、今ではぜんぜん使われておりません。にゃぜにゃら、ある日をさかいに、このおやしきの人々はみんにゃ、水を使わにゃいでもよくにゃったからです。 みにゃさん、お亡(にゃ)くにゃりににゃってしまったのです。お…

んこみての

その頃を夕刻と呼んでよいのでしょうか、お日様の光がずいぶん弱まったことを確かめて、私たちは色とりどりのスポオツウェアに着替えて、町へと出ていきます。靴紐をしっかり結んで玄関ポオチへ出ると、一花姉さんはもうストレッチを済ませて私をにこやかに…

リア・マニオンの台所糞便学(キッチン・スカトロジー) (前編)

彼女たちの最近の土曜の午前と言えば、西館裏のコートでテニスと相場が決まっていた。実際、日も傾きかけて陽明寺通りを北上し、スーパーの袋を両手にぶら下げてアメリカ人留学生リア・マニオンの部屋に向かう時、ヨネックス・ラケットのグリップゴムの芳香…

カンバセーション・ゾンビーズ

これは、現在テレビに出てる芸能人が全員死んだ未来の話である。 かなり極秘のとある研究所(駅近)、ホルマリン漬けされた志村けんの右腕が安置されている部屋(3階)に、芦田愛菜の遺体が運びこまれたその時(2時)だった。とつぜん、端っこの傘立てにさ…

授業参観で産まれた子供、2014年の松本人志添え

「母ちゃん、無理して来ちゃダメだからな!! ぜったい、来るなよ!!」 キッチンに向かって一発、大声で告げ、「来たら承知しないぞ!!」とダメ押しして、オイラは学校へと全力疾走した。 オイラのクラスでは、先生も含めた少子化24人クラス全員の、どい…

本当は恐い職業体験

「丸山、きょうの放課後、校長室に来い」 壇ノ浦先生からそう言われたオレだったが、校長室の場所がわからず、掃除のおばさんに聞くことになった。おばさんが何も言わずに歩き出したのでついて行くと、図書室を通る最短ルートで校長室に着いた。ノックして中…

メイサ~乳房になった女~

右乳房が黒木メイサの顔になる奇病にかかってしまった15歳の野良子(のらこ)は、気の強いメイサにお気に入りのブラジャーを食い破られた。 風呂場の脱衣所で、眼帯みたいになってしまったブラジャーを手に、思案に暮れる野良子。鏡に映ったメイサはつんと上…

物思う人によせて(ゼッタイお前のことじゃない)

ワインズバーグ・オハイオ (講談社文芸文庫) 作者: シャーウッド・アンダソン,小島信夫,浜本武雄 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1997/06/10 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 34回 この商品を含むブログ (13件) を見る 大江健三郎が綿矢りさに贈ったと…

『ちーちゃんはちょっと足りない』を読んで

ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!) 作者: 阿部共実 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日: 2014/05/08 メディア: コミック この商品を含むブログ (8件) を見る ベンヤミンは友人のショーレムに宛てた手紙のなかで…

「トスカ」を見て

お母さんが園芸を好きだから思うのだけど私はあの日のハンバーグと一緒にデイジーの種を飲みこんでしまったと思います。で便秘気味だから思うのだけど種がおなかで芽を出してぐんぐん伸びてしまったのだと思います。 私は基本よく言われるけどマイナス思考だ…

後生大事に

ようやっと電車がホームにたどり着き、3分ほど息を止めていた扉が大きく息をつくと、ホ-ムに人が溢れかかった。改札に出るには、上り下りで一揃い並んだエスカレーターを2回、"くの字"に下りる必要がある。 それまで人混みに埋もれていた小学生になるかな…

あたしが好きな安藤くんはキライ

「好きなんだ、付き合ってくれ」 ガコガコガコ安藤くんガコガコガコガコガコががが言った瞬間ガコガコガコガコあたしのイトノコの刃が大きくたわんで木材とガチこんでとんでもねえ音が勃発。 パニックになってあわあわするあたしの足を安藤くん思っくそ足の…

美少女の「ビ」、アキラの「ラ」

苦慮という言葉は父からもたらされた。自分は父の言いなりに利き腕を右とし、日本語を母語とし、それからやはり苦慮することになった。分別を過度に知ることで失い、崖下に美少女の「ビ」が見えた。 自分は崖下に続く暗い道を下った。大阪近鉄バファローズの…

ふたりの姉妹

この世でいちばん好きな曲で書きました。 The Kinks - Two Sisters (High Quality).mp4 - YouTube 美代子は鏡を見つめていた。化粧を施された自分の顔を様々な角度からながめては、納得いかないと言うように首をひねり、さらに手を加えようと勢いよく顔を寄…

少女A 読書ノート

彼女が全てのテスト日程を終えた日の深夜、夜更かしな家族の寝入りばなのことだったが、彼女は手入れの行き届いた自分の部屋で、長い間とりかかっていた読書ノートを書き終えた。彼女は虚ろな目でいったんそれを閉じ、また開いた。消しゴムを使わない手癖の…

パンツの潮騒さようなら

「今日思ったけどさ、やっぱり女子のスカートが短くなってきてるよ」「太陽に誘われて上へ上へと伸びてきた生足がスカートの中で風通し良く可憐な花を咲かせる最良の季節の訪れだな。よかったな。松波、ホントによかったな」「なんだよその言い方は。うるさ…

えりり、ジャーマネを殺す。

えりりはフジテレビの控え室で、今日買ったばかりなのに血に染まりきった包丁を持って、肩で息をしながら立ち尽くしていた。 目の前にはジャーマネの死体。 えりりはジャーマネを刺した。胸を一突きした。物怖じしないと評されるだけあって、殺してしまって…

少女A 1

阿佐美景子は昨夜遅くのスポーツニュースでウェイン・ルーニーを見た。 頭が丸くて、胸板の厚い、レゴの人形のようなそのサッカー選手が頭を下に飛び上がってシュートを放ち見事なゴールを決めた時、誇張なしに、彼女には何が起こったかわからなかった。ルー…

劇空間プロ野球2

こうして、やるとなったらやる男、古田を表向きのリーダーにすえて、さらなる野球のエッボリューション(関西ノリ)を我らの手で巻き起こそうではないか、よいではないか、とみんな心を一つにして、次の日はめちゃくちゃ食べた。 まずは、目指すべき、新たな野…

劇空間プロ野球1

野球中継がテレビから消えて30年、サイボーグ化したナベツネがようやく亡くなったころ、みんなの好きな公園でやってたアレ、つまり野球が動き出しました。 ある晴れた日、ボルダリングの帰り道、駅のホームで、ぼくたち野球革命軍一同は、少なくともホリエ…

ドアを強く鳴らすのは誰だ? (穂村弘『短歌の友人』)

謝りに行った私を責めるよにダシャンと閉まる団地の扉 小椋庵月 一読して、面白いなと思った。歌自体も悪くないのだが、それ以上に魅力のポイントがただ一点に集中していることが面白かったのだ。具体的に云うと、それは「ダシャン」の「ダ」である。この「…

欲望の「ダシャン」 (穂村弘『短歌の友人』)

短歌の友人 (河出文庫) 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2011/02/04 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 12回 この商品を含むブログ (22件) を見る 謝りに行った私を責めるよにダシャンと閉まる団地の扉 小椋庵月 一読して、面白いなと…

熟慮の余裕(『アイヒマン調書 イスラエル警察尋問録音記録』)

一刻も早く風呂の掃除をして風呂に入らなければ明日朝からの仕事がつらい。シャワーだけでは疲れは絶対にとれないから、湯を張らなければいけない。 冬休みにあたる時期、塾講師の仕事は忙しく、普段はそうでないのが売りのくせにそれなりにぴりぴりした空気…

シュリーマンが憎めない(『シュリーマン旅行記 清国・日本』)

シュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325)) 作者: ハインリッヒ・シュリーマン,石井和子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1998/04/10 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 37回 この商品を含むブログ (37件) を見る ホメロスの詩『イリオス』…

ボクの失恋バナシ

彼とボクの話は、だから中学の修学旅行にさかのぼるわけ。しかもお風呂。1時間とか、きっちり時間決まって、まとめて入るやつ。修学旅行の大浴場なんてほとんど貸し切りみたいなもんだから、みんなは好きホーダイ走り回ってるわけ。湯けむりの朦朧とした中…

出席番号5番 近藤美莉

あんなにドキドキした、私と同い年ぐらいの女の子たちが繰り広げるボルテージ高まるばかりの恋やら愛やらほにゃららを描いたマンガはなんだか遠くなってしまった。 あんなに痛快だった、女の子が外見とは裏腹に心の中でハイテンションに止めどなく豊かに喋る…

こんな歯医者はイヤだ

「横島コウヘイくん、こちらへどうぞ」 院長の息子さんが今年の書き初めで書いたという「診療室」という習字を見て不安になったコウヘイが振り返ると、お母さんはコウヘイとは逆の方を向いて、『女性自身』をソファにうつ伏せになって読んでいた。「お母さん…

出席番号3番 木嶋陽介

出席番号2番 宇野道夫 宇野がいなくなって何日か経った。あれこれ噂が立っているらしいが、特に何が変わるということもなく期末テストが始まった。 俺はテストが好きだ。その時だけ出席番号順に変わる席が好きだ。教室に入ってすぐ、机の間を縫うことなく自…

合コンGO!GO!GO!

年の離れた小4の弟のミサンガが切れた日、血もつながっているし、なんだかいけそうな気がして、合コンに参加した。「ガタガタッ。自己紹介します。オレの名前は百一匹ワンちゃ朗。ワンちゃろうのろうは、『ほがらか』の朗。最近見たおもしろかったもの70…

雑種サンタと黒人専門学校

クリスマス・イヴの朝、俺は胸騒ぎで目を覚ました。元気のいい瞬きを2発すると飛び起きた。それも、喉から暴れ豚(馬の倍、緊迫感がある)のようにせり上がってきた声を出しながら。「ポチコ!」 ガラリと窓を開けると、やっぱり、やっぱりだよ。隣の戸叶さん…

ライフ・イズ・コブラツイスト

島田紳助が二審で勝訴したというニュースが飛び込んできた時、俺はカレーをあたためていた。特に変わったことはなかった。変わったことと言えば、島田紳助が二審で勝訴したことぐらいで、中身をぞんざいに取り払われたビニール袋がふとした風に追いやられて…

たぬきの回る電子レンジ

今日も、宮沢賢治の話に出てきた人が杉をたくさん植えてつくった林のいちばん高い松の木の下で、週に一度のたぬき会議が行われていました。 外せない議題としては、飯、色恋沙汰、モンハンの進度などがありましたが、本日はお日柄も良く、めずらしくたぬき達…

忍者失格

密偵任務は大失敗、おしっこもらして聞きもらし、ついでに大事な秘密ももらした。 お城まで、走り、疲れて歩き、走り、の自主練始めたての中学生みたいなペース配分で効率悪く帰ってきた日系ブラジル忍者、内田カメダス闘莉王(まったくの偶然。これは田中マ…

6回裏、東北楽天イーグルスの攻撃は

父さんは11年間、僕の父さんであり、15年間、母さんの夫であり、それ以外ではなかった。日曜日の夜をのぞいては。 ホテルマンだった父さんの休みは火曜日だけ。と言っても火曜日には何にもしない。家にいて、ときどき散歩をする。僕が帰ると、父さんはい…

ヤバいヤバいとみんな言うけど

オッス、俺の名前は、芝キサブロウ! 大学2年の遊び盛り! 今日も今日とて悪ノリ写真の毎日毎日サークルかけ持ちクリパに宅飲み連日連夜の合コン街コン、友達100人できちゃってワロタヤバすぎ、どーすりゃいいのよキャンパスライフ! そんなわけで、人間…

おじいちゃんと僕、そして金

金運を上昇させるお守りをハンドルに八つぶら下げたマウンテンバイクにまたがり、少し思案する。 病院にいるおばあちゃんは封筒をくれない。家にいるおじいちゃんは封筒をくれる。ここから導き出されてしょうがない答えにむしゃぶりつきたいが、まだ小学生だ…

サッカーシューズをくれてやる

ぼくの一日はため息が多くなった。生まれたり、ボウリングの最初の一投でストライクを出したりする時は100あると言われる覇気がすっかり無くなり、今も、便所で用を足した後、完全に真っ直ぐ立ってけつを拭いていた。これは、あぶない。「ピンポーン! 森…

兄と吾郎とVリーガー

「いいか吾郎、今日は早く寝るんだぞ」 歯みがきの時間、お兄ちゃんが口を泡だらけにして言った。「うん、何時に起きる?」「4時。そんで4時半出発。」 まだ9時にもなっていないから、7時間はねむれる。「うん、わかった。目覚まし時計をセットしなくち…

丹野埜枝の爪

コンビニで水とスマートフォンの充電器を買って、狭い路地の方へ入り、店舗を舐めるように少し行った所で突然、後ろから羽交い締めにされた。 服同士が擦れ合って歯ぎしりのような音を立てる。相手は自分よりも筋肉質だということが同時に包まれた肩と腋の感…

こじらせるといふこと

なんらかの界隈で一悶着おこっている時、いやだな、何がいやなのかな、と考えていたらますます厭になってきて書いたものです。 細かいことや事実関係など問題にしていません。 何か論争の火種ができた時から、みなさん、裁判をしているかのような物言いにな…

「CSR」 (『内覧』より)

次は2階だった。 ふとした拍子で彼より先に階段の最初の一段に足をかけてしまい、一段一段の恐ろしく高い急な階段をせき立てられるようにして二階へ上がった。あまりに急で、横向きにならないと落ちてしまいそうな、切り立った崖のような階段であった。上に…

川辺

本町の住宅地を抜けて、赤と白の電波塔に見守られた大きなカーブを曲がっていくと、そのまま燕川の土手の犬走りにつながる。立ちこぎのマウンテンバイクを走らせて堤防までの坂を一気に上がると、見上げていた青い空が緑と川をしたがえた明るい景色に変わり…

ろくな性教育 ~地方都市のめしマズBros.~

「公園で、野球をすんな!」 公園で野球をしている子供たちをはっきりしない巻き舌で叱りつけ、真新しそうな金属バットを奪い取った二人の男。ずんぐりむっくりしたチビと、ひょろ長いノッポ。灰色のおそろいのハーフパンツに色違いの色褪せたTシャツ、緑は…

核心の在り方について

http://picup.omocoro.jp/?eid=1714#sequel このあいだ、どろりさんの「海」を読んでいた。この作品は、主人公に気持ちが寄り添うようにできている。それで最後に、その甲斐なくという言い方になってしまうが、此の世の無情みたいなものに触れることになるの…

隅田川に雲がなければ

30分前、僕と真月は両親と兄夫婦を、真月にとっては両親とおじいちゃんとおばあちゃんを玄関で見送った。そのとき僕はサリンジャーが「ハプワース16, 一九二四」で書いていたことを思い出していた。つまり。一番すばらしい小説の書き出しは、家族で出かけ…

シオマネキ

水平線まで続く一面の干潟に、小さな人影。子どもが一人こんなにうらさびしい場所を歩っている。見たとこ小学3年生ぐらい。ONE PIECEのTシャツ1枚かぶって、ちんちんちらちら覗かせて、重たそうな一歩を、飛沫を跳ね散らかしながら着くたび足首まで泥に浸…

サザンオールスターズ「栄光の男」を聴きながら製氷する夜

久しぶりに氷をつくっています。 早々に一つの穴を満たした水は、溢れて隣の穴にこぼれ逃げてゆきます。 次の穴から次の穴へ、同じ形に象られてゆきます。 キッチンの電灯一つが照らすその下の、小さなシンクの囲いの中の、所帯じみた製氷皿の凹みの上、そこ…