創作

バスケがしたいです

ダムダムとバスケットボールがコートのあちこちで弾みかける音の良さに惹かれて、私はバスケットボール部に入ることにしました。 入って1ヶ月間はボールを持たせてもらえないランニングやフットワークばかりの練習でした。私と同じ1年生のみんなは、こんな…

うんち数えて

朝6時、大きなバスのエンジンは既に動いていたが、相変らずターミナルに停車したままだった。バスガイドが乗客全員分のうんちを数えていたからである。「1、2、3、4、5…」 平日ということもあり、ババア8、ジジイ2の割合で埋め尽くされた2列シート…

童貞おまんこ一変化

午前8時の集合は、朝ごはんをしっかり食べてこいと言うメッセージだ。どんなにハードなトレーニングが待っているか知れたものはない。でも、一体ちんこ が食べる朝ごはんなんてあるだろうか。前日10時に横たわり、6時に起きた僕のちんこは、ガラスのコッ…

電気仕掛けのパン屋店主

どうしようかな、やっちゃおうかな。 お店のものぜんぶ、叩いたり、蹴ったり、倒したりして、一つ残らず壊しちゃおうかな。 冷蔵庫も、電子レンジも、洗濯機も、テレビも全部、壊しちゃおうかな。 そんな町の電気屋さん近所になかったから、おもしろいかもな…

海の踊り子

それはもともと私の仕事でもあるが、今日は幾分ちがう事情で耳をそばだてている。肉のつまった8本の足がよく手入れされた畳を引っかく音と震動がふすま一枚を隔てた部屋の真ん中に向かって遠ざかっていくようであった。 さっきまで小さなハサミを使って小器…

私はバイソンを飼わない

赤ら顔のお父さんがニコニコしながらスト2のバイソンを買ってきた金曜日の夜。その半年前にパナポは死んでしまいました。私のことが大好きだと言って死んでしまいました。ハムスターはしゃべれないけれど、きっとそうだと思います。 酔っ払ったときのお父さ…

勇気一つを友にして

遠いところにいる人は、私なしでも元気にやってそうでなんだかつらい。かと言って、毎日ふさぎこんでいて欲しくはない。でも、誰に対してもそんな気持ちになれなかったら、心底つらい。 「トラ子、私わかったの。太陽は遠くで燃えているからちょうどいいのよ…

忍者牧場

僕はやっぱり父さんと母さんが犯人だと思う。母さんが作って、父さんが食べさせたのだ。だから犬小屋に手を掛けておばあちゃんが泣いている横で、二人は平気な顔で立っていた。かわいそうな白いタロ……。 曇天模様の空の下、ほこりっぽい道路をご自慢のボルボ…

宵の明星3

「今日、放課後、付き合って」 そう言われたのは朝の昇降口だった。もしかしたら待ち伏せしてたんだろうか。そして放課後、私たちは山にかかった石段を登っている。 日の当たらない石段は苔むしていて、滑りやすい。お嬢様のくせに、千鈴の足取りは軽くてし…

君こそタヌキだ

森の新聞記者、近鉄バファローズの帽子をかぶったタヌキの亡骸を発見したのは、つらいことに当の母ダヌキでした。帽子はかぶっておりません。 森の新聞記者、近鉄バファローズの帽子をかぶったタヌキは、まるまる太った土手っ腹に一発撃たれたあと、這って這…

一人暮らし

私は居合いの達人です。すごいんだから。だって人間国宝。そのとき面接みたいのもあったよ。くそ、今日もまたYouTubeの削除依頼を出さないと。だってってあなた、凄くしつこく私の動画(農協牛乳のパックの上口を開いて逆さにしてテーブルの上に置き、その上…

宵の明星2(まだ普通)

それから、わたしたちは少しずつ言葉を交わすようになった。でも、どこかこそこそと。わたしが「竹下さん」ときどき「奈緒」に変わったころ、千鈴の視線が柔らかくなった。その千鈴が、ゆかりちゃんと話している。千鈴は少し嬉しそうに笑っている。ははん、…

宵の明星

白塗りの高い壁に時おり松の緑が頭を出して、それずいぶん続いていると思ったら、やがて立派な木製の門が現れて、その中が全部、千鈴(ちすず)の家の敷地なのだとわかった。すごっ、と圧倒される。都会に比べるとでかい家の中でも、ひときわ、あきれるくら…

OBD

夏のある日のマクドナルド、隣の中学生の女の人たちは二人とも話すことがなくなってしまって、テーブルに突っ伏して捧げるように両手で持った携帯をいじってはハイヒールで歩くみたいな音を立て始めている。そんな姿を見ていたら、この先に横たわる毎日を退…

大人になれば

ただ、恋人と腕を組んで歩いている、というそれだけの理由で、おちつきはらってあたりを見回していた少女。フランツ・カフカ 自信を持つのは良いことだ。いつかパパがお風呂で言った。湯船の中、私はパパと同じ方を向いて足の間に収まり、その言葉を聞いてい…

友人訪問

時流れて有りや無しや志半ば、途轍も恥なくジジイと変じた私ですが、ハイパアヨーヨー・ステルスレイダア一つ持って池尻君の宅を訪ねようととバスでもって馳せ参ずらんと試みるも、何分今度が初めての事でバスの乗り方一つ皆目見当がつかず非常に骨が折れ、…

役に立たない音楽が鳴る

母親に牛乳を頼まれて、高校1年の樹一(じゅいち)は身を切るような寒さの中をしぶしぶ出かけていった。 すぐそこにあるコンビニでの買い物をお母さんは許さない。公園を横切って行くとスーパーへの近道だ。近辺ではなかなかの広さを持ったその公園には、中…

子牛担当

僕が膝ノ裏ファミリー牧場を去ることになった日のことを話したいと思います。 僕は14時の鐘がガラランガランと鳴ると、いつも通りかわいい子牛たちを連れて牛舎を出て、丘を登っていきました。子牛たちは尾をぱたぱた振って僕のあとをついてきて、時折うわ…

卒アルは浮く!!

晴れ渡った空に太陽がギラギラとここはハワイ。行ったことはないけど、主にさまぁ〜ずの番組で雰囲気を勉強したので書くことが出来ます。 そんなハワイで今日は待ちに待ったサーフィン大会の日、卒アルを縦に三つ(小中高)つなげた自慢のサーフボードを抱え…

レギュラーピエロ争い

三流大学受験におもしろ消しゴムみそラーメンを持って行き忘れて失敗し、親からも「働け!穀潰し!」と責められた小谷は、学ラン姿で茫然と街を歩いていたところを謎の女に声をかけられた。 「君、大学落ちたでしょ」 「え?」 「ピエロにならない?」 それ…

密室ゲーム(下)

マチャアキはメモ帳を取り出し、咳払いをしてから読み上げた。 「ルールは簡単。4択クイズです。ABCDの中から正解と思うアルファベットを選んで解答してもらいます。お二人ともに同じ問題が出るので、それぞれ答えてください」 僕は黙ってうなずいた。…

密室ゲーム(上)

「う、う〜ん。どゆこと!?」 誰とでも友達になれるタイプの僕が目を覚ますと一面の濃ゆい緑に目がくらんだ。全身に痛みが走った。 そう、僕はさらし首が如く卓球台の一方の面の中央部からひょっこり顔を出していたのだ。ひどく狭い部屋らしく、卓球台のへ…

音楽・準備・輪廻

楽器がいっぱいつまった音楽準備室で、ぼくと大橋くんは息を潜めていた。 隣の音楽室からはピヤノの音が聞こえてくる。 曲にならない、途切れ途切れに一つずつ鍵盤を押す音だ。でも、一つ押すたびにハクいスケの笑い声が聞こえてくるので、ぜんぜんさびしく…

うちで飼ってたヒグマ

この春、いつも明るい金持ち二百二階堂家の白い大理石は心なしかくすんで見えた。 問題は、飼っているヒグマのドベリンである。ドッジ弾平ぐらいの大きさだった小グマちゃんのころから育ててきたドベちゃんは大事な大事な家族だったが、かなりの難病にかかっ…

鈴鹿で一言

「投げても飛ばないセミは本当に終わり」が座右の銘のF1ドライバー、四輪駆動ワタルの半生は、 「まるでこのヘアピンカーブを曲がるみたいだったぜ!」 と叫びながら、色とりどりのボタンがいっぱいついたハンドルを左に二十回転させるワタル。見事に、女…

マーズ・アタック!

そこは先輩の部屋。僕の家にきた宇宙人と同じ宇宙人が二体、先輩と何か話している。火星人だ。 「だって俺の場合さぁ。この惑星(ほし)に生まれてさぁ」先輩は両手を後ろにつき、体育の時にリラックスした男子高校生のような体勢でいながらも、心は戸惑って…

社長の息子マジックショー

社長の息子は前に出てくると、日高屋に通い慣れた人みたいな横柄な態度で五年一組の三十六人を見回した。 ならんだ机のまん中あたりに座っている亀山ノブヒコは、両ひじを突いて不満げの顔で、その憎き小さい、小さいダブルのスーツをじっと見つめていた。 …

ませてないガキから退場

既に、鼻血を出してぶっ倒れてしまった子供たちが何十人も医務室に担ぎ込まれていた。残っている子供は、五人。各々、やや斜めを向いて腕を組み、野球帽のツバを後ろに向けたいわゆるスケベかぶりで、鼻の穴をふくらませている。 「パンチラ」 スタジアムの…

ぼくのお母さん

「冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードのマーカーが出なくなったの。ペンに磁石がくっついてるやつ。あんた買ってきてちょうだい。どうせヒマでしょう。頼んだわよ。磁石がくっついてなかったらいらないから」 ちょっとちょっとお母さん! せっかくの日曜日に…

まことハンター

まことハンターは河童を生け捕りにしようとしている。 過去にツチノコ、天狗、クロアゲハなどを生け捕りにしようと奮闘し、スカイフィッシュの時はくそつまらないDVDまで参考にしてきたまことハンターであったが、さすがにバカらしくなり河童に関してはあ…